読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

yshkn’s blog

島根に長期出張中の文系卒ITエンジニアの日常

学びとは何かを読んだ

読書 7点

10点中7点。

6冊目。

学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書)

学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書)

 

 

 

興味をそそるタイトルでかつ評判も良さそうだったので読んでみた。
率直な感想としてはかなり面白いが、想像していたよりゆるい内容という感じだ。
岩波新書の印象は固くて専門的な内容で軽めの専門書といった内容だったのだが、本書はわりとトピックがバラバラで主観的な内容もあり、専門的な内容を含んだ学びに関するエッセイ集といったイメージだ。

 

目立つのが将棋の羽生善治名人への言及だ。
もちろん将棋という日本で盛んな頭脳ゲームのトップを走る人なので、サンプルとしては申し分のない人だろう。
しかし、羽生さんの著書からの引用がいくつかなされていて、ケーススタディの域を超えて羽生さんの論理を本書の補強として使っているようなところがあったように感じられた。いくらすごい人だといっても思いつきのエッセイに毛が生えたような本を補強として使うのは逆に科学的信頼性を損なうのではないかと感じた。

著者は認知科学の専門家らしく、主に子供が言語を学んでいく仕組みを研究しているようだ。使えない知識を溜め込む役に立たない勉強と正反対の役に立つ学びのモデルとしてそのメカニズムを解説している。
一つの単語を覚えると、おなじに見えるものはすべてそれだと考える。例えばボールを覚えるとスイカもボールだと判断する。といったようにおなじに見えるものはどんどん類推してその知識の適用範囲を広げていく、これはその範囲外だとわかると修正してまた新しい知識を覚える。その繰り返しで学習していく。

想像通りのメカニズムだが詳しく言語化されまとめたものを読むと整理されて頭のなかに入ってくる。これが読書の一つ大きな効用であるだろう。

 

以前感想を書いた「プルーストとイカ」が言及されていて「プルーストとイカ」の影響力の大きさを感じた。

 

本書で著者が考察し伝えたかった主題としては、学校等の教育でより優秀な人を育てるにはどのように改善すべきか。ということである。
アクティブ・ラーニングという言葉がもてはやされており、著者も総論としては賛成に近いようだが、個別の手法については批判的だ。遊びで楽しみながら学ぶほうが意欲も高く自由な発想も生まれるというのは正しいのだが、ブロックや粘土をを渡して自由にやれと言っても興味はわきにくく、それについて怒ったり、あとでどんなことを学んだかテストのように聞き出すといったことをやっていては自分で考える力は育たず、むしろ逆効果だという。自分で自由に学んでいく力を育む環境をつくることが、非常に難しいことではあるが、最も重要なことだと訴えている。


かなりとっちらかってしまったが、本自体も全体で見るととっちらかっている印象だ。(個々の章はそんなことはないが)
専門的に一つのテーマを全体を通して考察する本を期待する人にはあまりお薦めはできない。「学びとは何か」というざっくりしたテーマについて色々なトピックの知識を得たいという人にはぴったりだと思う。

 

採点についてはリンクの記事に書いてあります。